昔からの Mac ユーザだったら誰でも 72dpi のディスプレイ解像度というものを知っている。もともと Mac が WYSIWYG(What You See Is What You Get) と言っていたのは、72dpi のディスプレイで見て、72dpi のプリンタで出力していたからだ。当然、見ためと出力は完全に一致した。
プリンタの解像度が高くなり、PostScript が導入されて見ためと出力が一致しなくなった後も、Mac は頑なに 72dpi をまもりつづけた。だから当時の Mac はディスプレイ上のスケールが現実のスケールと一致していた。ディスプレイに定規を当ててみるとよくわかる。あるいは出力した紙をディスプレイに重ねてみてもいい。
当時は Mac は解像度が低くて、Windows は解像度が高いといういわれのない批判もされた。彼らには 72dpi の本当の意味がわかっていなかったのだ(Windows は大きなディスプレイで表示すると表示エリアが広くならずに解像度が荒くなるというおばかな仕様だった)。その Mac も時代の流れには逆らえず 72dpi の原則を壊してしまうようになっていった。記憶が不確かだが Performa が登場したあたりからだと思う。
さて、Apple を追い出された Jobs がつくった NeXT であるが、彼のスタッフはワークステーションの高解像度ディスプレイを頭に NeXT をデザインした。当然、彼等は Mac の 72dpi という解像度を不十分だと思っていただろう。彼等も WYSIWYG の思想を持っていた。だが、NeXT Cube がなくなり、PC互換機に寄生するようになってからはそんな贅沢は言えなくなった。私は NeXT に詳しくないので知らないのだが、NeXT Cube のディスプレイ解像度はいくつか知っている人がいたら教えて欲しい。
以前あるメーリングリストで OPENSTEP のアイコンは大きくて、Mac のアイコンは小さい。Rhapsody はどうなるのだろうという話があった。だが、72dpi の解像度でデザインされた Mac のアイコンが小さく見え、より高解像度でデザインされた OPENSTEP(NeXT) のアイコンが大きく見えるのはあたりまえなのである。
だから、Rhapsody のユーザインタフェースを考える場合、どちらのアイコンサイズを採用するかを考えるのではなく、Rhapsody ではどのディスプレイ解像度を採用するかを考えるべきである。アイコンのドット数はそこから自然と決まるだろう。
Mac では 72dpi の解像度が時代遅れになってしまった。NeXT ではハード部門がなくなることにより WYSIWYG は失われてしまった。だが、Rhapsody の登場は WYSIWYG の復活のチャンスかもしれない。
全ての Rhapsody で WYSIWYG は無理だろう。だが、今後登場するだろう Rhapsody のプレインストールMac では WYSIWYG が可能かもしれない。これは OS とハードの両方を創っている Apple だからこそできることである。そして、Mac と NeXT の生みの親である Jobs になら可能である。